巧妙に心を支配する恐ろしいサイクル
DV(ドメスティック・バイオレンス)には身体的暴力や精神的暴力など、いくつかのタイプがありますが、暴力にはサイクル=周期があることを知りました。
暴力のサイクルがどのようなものか、
また、夫の言動・行動を暴力のサイクルという基盤に乗せ、あらためて自身の受けてきたことを振り返りたいと思います。
DVによる暴力のサイクル
DVについての資料でよくみられるような暴力のサイクルの図です。
- 緊張期
分かりやすく激しい暴力はないけれど、加害者はささいなことでもイライラするなど不機嫌を露わにしていく。
被害者は威圧的な空気に緊張と恐怖を強いられる。
この暴力がひどくならないように、被害者は加害者からのプレッシャーを対処しようとしたりする。 - 爆発期
加害者が自身のストレスや緊張をコントロールできず、衝動的に激しい暴力をふるう。
被害者を自分の思い通りにするために、徹底的に恐怖や無力感に陥れる。 - ハネムーン期
暴力の後、別人のようにとても優しくなったり暴力を謝罪したりする。
加害者自身が満たされているかぎりは安定していて機嫌が良い。
被害者は、加害者が変わってくれるのではないかと期待したり、この時の加害者が本当の姿だと思い込み、暴力をふるわせた自分を責めたりしてしまう。
DVによる暴力をする人はこの緊張期・爆発期・ハネムーン期の3段階を繰り返す傾向にあるようです。
被害者は暴力によって心や身体を傷つけられるだけではありません。
ハネムーン期の優しい加害者は〝偽りの姿〟です。
心から被害者を思いやったり、暴力を反省しているわけではないので、また緊張期がやってきます。
ハネムーン期の加害者の謝罪や優しい姿に、被害者は心の恐怖や緊張から解放されたのに、再び暴力の恐怖に縛られ、心が困惑し絶望に追いやられます。
このサイクルを繰り返すことで
被害者は次第に心身消耗し、暴力に抵抗したりまともに考える力が奪われてしまうため、暴力から逃れることが難しくなってしまうようです。
加害者の支配・コントロールから抜け出せなくなります。
暴力のサイクル~夫の場合
夫の暴力のサイクルはやや変則的だったかもしれません。
3つの段階を順番通りに回らず逆流することもあれば、飛ばすこともあり、また、それぞれの期の続く時間・期間もその時によって違いました。
夫は好きなことをしている時、
休んでいる時以外は
ほとんど緊張期のような感じでした。
どんなに機嫌が良くても
少しでも夫の心に沿わないことを言ってしまったりやってしまったりすると、一気に爆発期に。。。
夫は一日のうちに大小の暴力のサイクルを何度も回り続け、分単位、秒単位で豹変しました。
そんな夫に心を乱されながらついて行くのは本当にきつく、言葉で言い尽くせない苦しさがありました。
私は夫の目の色の変わる瞬間、口元の締まり方など、夫の表情・機嫌の潮目に敏感なり、それを見極めて対処しようと心を忙しく働かせていましたが、夫のモラハラの発動を止めることができませんでした。
とにかく夫が
穏やかでいてもらえるように
気持ちよくいてもらえるように
楽しくいてもらえるように
私は自身の言葉や表情を間違えないように、日々必死でした。
夫がくれる飴
夫の鞭と鞭が重なり大げんかをした後、夫からよく少し苦い飴をいただきました。
いつも流れは同じような感じでした。
けんかの際、夫は巧妙な責任転嫁で私を悪者に仕立てあげ、頭ごなしに責めて罪悪感を植え付けます。
夫は、けんかの翌日はいつも
ものすごく不機嫌で攻撃的な空気を部屋に充満させて出勤していきました。
その夫の後ろ姿を見送り残された私は
夫の思惑通り、悲しみ・恐怖それと夫から投げつけられた罪悪感で見事に心が崩壊し、感情がかき乱されていました。
〝私が夫を傷つけた〟
〝私のせいで夫を不愉快にした〟
〝このままでは夫に捨てられる〟
私は夫に言われたことを思い返し、自身の言葉や態度を責めては後悔しました。
〝私が我慢すれば良かったのだ〟
〝あの一言を飲み込めば〟
必死に反省の言葉を綴り、夫のために良き妻になることを誓う内容のメールを送りました。
〝夫は許してくれるだろうか〟
〝今夜、家に帰って来てくれるだろうか〟
胸をきつく締め付けられるような思いで、夫に心を注ぎました。
でも、夫は
私の送るメールの内容への返信はくれません。
夫は、私が反省していつも通りににこにこして、夫のために尽くしていればそれでいいのです。
そこにある問題を解決したり、あらためて話し合う機会をもうけたりすることは一切ありません。
どんなに夫に非のあることでも、もちろんちゃんとした謝罪もありません。
私が少しでも話を振り返ろうとすると、すぐに顔が曇り空気が変わります。
「何?まだ話すの?」
「反省したんじゃないの?」
などと威圧的に言われ、私は心がもたず怯んでしまいます。
夫は一つの物事にきちんと向かい合って話すということが、まったくできませんでした。
私の言葉を完全に封じ、私が夫に許しを請い、従順になったと確信すると夫は優しく穏やかになりました。
私を強く抱きしめてくれたり
優しい言葉をかけてくれました。
近所のおいしいケーキや
袋にいっぱいのお菓子などを買ってきてくれたり、、、
そうされてしまうと、
私はそれ以上夫に言葉を重ねることができませんでした。
何ひとつ問題は解決していないし私の中の悩みが消えたわけでもないのですが、夫が私を許し、また受け入れてくれたことに安心してしまいました。
夫がたまにくれる飴。
その飴の味が少し苦いと感じながらも、夫が私のためにくれたことがうれしくて、またその飴がもたらす優しいあたたかい空気を手放したくなくて、大切に味わいました。
暴力のサイクルでいう、ハネムーン期。
その夫の優しい言葉も行動も偽りであり、私の心を壊して支配する暴力の一部だと知らなかった私。私は少しでもこの時が続いてほしいと願い、
夫の笑顔、夫の心を守るため。
ひとときの平穏が少しでも長く続き、
それが本物になるように、と
いつまでも認めてもらえることのない、心身をすり減らすだけの努力を重ねていました。
おわりに
妻の心を翻弄するおそろしい暴力のサイクル。
人の愛情や良心を巧みに利用し、
自分の意のままに相手を支配し、自身の歪んだ欲求を満たす卑劣なものです。
モラハラの渦中にいる被害者が自身でこのサイクルに気づき、抜け出すのはなかなか困難なことだと思います。
モラハラの被害に苦しむ方々が
自分が壊れてしまう前にこの暴力のサイクルの存在に気づき、断ち切ることができることを願っています。
モラハラとその暴力のサイクルを知ることができます☟