思考も身体も飛んだ夜
〝モラハラ夫は身体的暴力は振るわない〟
モラハラ夫の特徴のひとつとしてよくあげられています。
でも、夫は例外。
過去に数回、私は跡に残らない身体的暴力を受けました。
とあるお正月の帰省中。
夫の強烈なビンタに飛んだ私。
今回は、その時の衝撃的なできごとをおはなしいたします。
帰省中の妻に安息は与えられない
私は帰省するたびに傷を増やしました。
どんなに心を入れ替えても立て直しても、必ず乱暴に壊されました。
夫家族の心無い言動や態度
夫の冷酷無情な振る舞い
それでも私には唯一、夫が頼りです。
せめて夫には味方でいてほしい、寄り添ってほしいと願い続けてきましたが、その夫から裏切られるという最悪の結末をくり返しました。
その時のお正月も、帰省初日から外にいる方がましなのではないかと思うくらいの風当たりに耐えながら、必死に心を抱えて身を守っていました。
帰省して数日。
私の心は疲弊しきっていました。
その日の夜。私は居間でお風呂から上がる夫を待っていました。
義母とふたり。
テレビ画面を見つめていました。
重い沈黙に窒息しそうな私は、テレビのボリュームが小さすぎて内容がよく分かりませんでしたが、画面からのわずかな情報を拾って話しかけたり、仕事に励む夫の日常を伝えたりしました。
義母の言葉は私まで届きません。
頑なにこちらを見ない義母。
薄い反応と不自然にテレビを凝視する義母の横顔には日頃の夫の姿が重なりました。
義母は本来、社交的な人です。
それを知っているので、まったく違う顔を見せる義母にどう関わっていくのが正解なのかが分からず、私はいつも心が揺さぶられ混乱していました。
それでも〝諦めたら終わりだ〟と言いきかせ、こみ上げる感情を抑えて明るく努めました。
しばらくしてやっとお風呂上がりの夫が居間に現れ、義母がお風呂に行きました。
夫の逆鱗に触れた妻
夫の登場に安堵したのも束の間。
夫は私を冷たく一瞥し、そのままテレビを凝視。
〝なんで実家でこんなに冷たくするんだろう〟
夫の〝冷たさ〟は日常的によくあることですが、ただでさえ帰省中は夫と夫家族のもたらすものに悲しみや不安・恐怖を強いられ、さらに今、こうして追い詰められたことで私の心は張り裂けそうでした。
私は思いきって、つらい胸の内を夫に明かしました。
しかし、夫は私の話をろくに聞かず一気に怒りに達しました。
夫の怒りをなだめようとしましたが勢いはとどまらず、威圧的で激しい攻撃が続きました。
「つらい、悲しいと訴えているのに、一方的に責めて突き放すのはあまりにも酷い、冷たい」
私の言葉は夫の怒りをさらに煽いでしまいました。
「俺に向かって『冷たい』って二度と言うな」
「俺はこれ以上どうすることもできない」
「不満があんなら出てけよ」
「俺に失礼だ。謝れ」
さらに夫は訳の分からない脅しの言葉を吐き続け、恐怖と絶望で太刀打ちできない私は黙りました。
汚い泣き顔で夫を見上げる私。
目を見開き、鬼の形相で上から私を睨みつける夫。
そして、
一瞬の間があった後
夫は思いっきり私の頬をビンタしました。
お互い立ったままだったので、ビンタされた私はその勢いで壁際まで身体が吹っ飛び、そのまま畳の上に落ちて倒れ込みました。
〝こんな姿を見られてはいけない〟
ものすごい衝撃でした。
身体の痛みももちろんありましたが、それよりもこのような自分の姿を夫の家族に見られたらダメだ、嫌だ、という気もちが先立ちました。
私は咄嗟に立ち上がり、逃げるように急いで寝室に帰りました。
部屋に帰ってやっと感情が追いつきました。
堰を切ったように布団に突っ伏して大泣きしました。
〝怖い〟
〝悲しい〟
〝つらい〟
そして
〝これが夫の家族に知れたら、私は追い出されてしまうかもしれない〟
という激しい不安と恐怖に駆られました。
その後、部屋に戻ってきた夫は私に一言も声をかけませんでした。
一つ一つの動作に不機嫌をにじませ、乱暴な音をさせながら布団に入って眠ってしまいました。
おわりに
翌朝、夫の怒りは鎮まっていませんでした。
私も昨夜の恐怖に浸かったままであり、夫にどう接したらいいのか分からず戸惑いました。
とにかく、夫を怒らせてしまったこと、自身の言動をひたすら謝罪しました。
昨夜のビンタが夫家族に気付かれているのではないかとずっと不安でした。
ビンタした息子
ビンタされた嫁
この場合、私が非難されることは目に見えています。
夫家族にとって大人しくて従順な息子が、人に手をあげるなんてあり得ないことです。
穏やかな息子がやむを得ず手をあげなければならないほど〝出来の悪い嫁〟〝息子にビンタされるような嫁〟が正当に扱ってもらえるはずがありません。
夫は自身の家族からの〝善良な息子〟イメージを計算済みで手をあげたのかどうかは分かりませんが、いかなる場合でも〝俺は一切悪くない〟〝おまえ次第だ〟と強引かつ一方的に私に責任転嫁し、自己保身に走る夫の怖さを突きつけられました。