危険と背中合わせのドライブ
ここのところ世間では
またもあおり運転に関するニュースがたくさん伝えられています。
以前、罪のないご夫婦があおり運転のトラブルから、車を停車して外に出ていた時に後続の車に轢かれて亡くなられた、とても胸が痛む事件がありました。
私はその事件がどうしても他人事だとは思えませんでした。
夫の車の運転は
いつトラブルや事故になってもおかしくない状況だったからです。
日頃から
被害者意識が強く
勝ち負けにやたらとこだわるモラハラ夫。
これが車の運転にはどう反映されていたのか。
体験した苦痛や恐怖をあげていきたいと思います。
天国から地獄行きのドライブ
夫とは、よく車で遠出しました。
夫は自分が行きたいところなら、とても積極的に外出しました。
私もいろんな場所に連れて行ってもらえるので、出かけるときはとても楽しみでした。
日頃、コミュニケーションが取れず虚無感に襲われたり、モラハラを受けて泣き崩れても、夫から明るく無邪気に「どっか行こう!」と魔法の言葉を言われると、私の心は息を吹き返し、夫の要望に応えたいと思ってしまうのです。
私は、行き先はどこでもいい。
とにかく
夫が行きたい場所
夫が楽しい場所
夫がリラックスできる場所
夫が喜んでくれるなら、しあわせだと思うなら、私にとってもそれが一番いいこと。
夫は自分が見たいものがあるとか、行きたい場所であるからこそ、レンタカーを借りたり、朝起きて準備するのも頑張るのです。
純粋に、私のためではありません。
それが分かっていてもやはり私は、日頃ストレスMAXで働く夫が笑ってくれるなら、一緒に思い出を共有できるなら、と思っていました。
私にとって大事なのは
夫が機嫌よく、しあわせかどうか
しかし、
毎回夫とのドライブには
苦痛・緊張・恐怖がついてきます。
必ず、今日こそは最後まで明るく楽しい一日にするぞ!と心の中で唱え、行きは「しゅっぱーつ!!」とふたりで声を揃えて明るく出かけるのですが、帰りは必ず重い心を持ち帰ることになるのです。
ここからは運転中の具体的な状況と夫の様子を挙げていきます。
車線合流
二車線、もしくはそれ以上の複数車線が合流しなければいけない場面。
だいたいそれぞれの車線から一台ずつ、順々に合流するのが争いもなく自然だと思うのですが、夫は自分の感情のままに強引にその流れを変えてしまいます。
順番に入ってこようとする車が気に食わないとか、ただ単に腹が立つなどの理由でその車の合流を阻止。
「こいつなんかむかつく」
「ぜってぇ入れねぇ」
などと嫌な言い方をします。
夫はものすごい威圧的な目つきで相手の車の方を睨みつけたり、既に入ってこようと動いている車の横を強引に突っ切り、危うくぶつかってしまいそうなことが何度もありました。
相手の急ブレーキにどれだけ助けられてきたことか。
車線変更
上記と同じような例ですが、
自分の車の前に他の車が入ってくるのを異常に嫌悪します。
車間距離はたっぷりあり、
何の危険も違法性もマナー違反もないのに、、、
文句をぐちぐち続けます。
空いていて、だいぶ先の方にいる車も気に食わない様子です。
ひどい時は、
猛スピードで前の車との車間距離を詰めてぴったり後ろにつきます。
前の車がスピードを出して車間距離をとってもしつこく追いかけてあおるのです。
あおりに耐え兼ねて前の車が別の車線へ動くと、夫は「勝った」と言いたげな満足そうな表情を浮かべ、ご機嫌になります。
渋滞中の車線変更も、夫の身勝手は同じです。
自分が車線を変更したいのに入れてもらえない時は「入れろよ!」「腹立つ」と言いながら強引な感じですが、入ってこようとする車はわざと車間距離を狭くして意地悪をし、入れさせないのです。
その時も、まるで良いことをしたような誇らしげな様子。
私はそんな夫の横顔を見る度に夫の人間性を疑い、心が暗くなりました。
高速道路の渋滞
だいたい行楽地に行ったら渋滞は想定内だと思うのですが・・・
夫は毎回渋滞につかまると不機嫌を露わにし、救いようのない空気にしてしまいます。
不満が詰め込まれた重く深いため息
周りの車への悪態
助手席にいる私への攻撃的な物言いや態度
思うように走れないストレス、長旅の疲れは理解していました。
なので、
夫が少しでも
心穏やかにいられるように
すぐに要望に応えられるように
常に気を張って、心配りに励みました。
夫が眠そうなときは、さりげなく明るく声をかけます。
「起きてる?」「寝ちゃだめだよ」と直接〝眠気〟に触れた言い方は絶対にNGです。
夫のプライドを傷つけるような言い方は、不機嫌が怒りに変わるからです。
飲み物や食べ物を要求されたら、
こぼさないように、良きタイミングを見計らって夫の口に運びました。
失敗すると容赦なく嫌な顔をされたり、怖い顔で注意されました。
また夫は、渋滞中の高速道路でどの車線が一番進みが早いか、ということにかなり神経質になっていました。
「どこが早いと思う?」
「あの車、さっき俺が抜かしたのにあんな前にいる!」
「あの車なんか腹立つから、絶対抜かす!」
「あっちのが早かったじゃん!」
と、夫は気が済むまで延々と凄んだり悪態ついたりしながら、このようなセリフをくり返し、ひとりで勝ち負けに血眼になっていました。
私は渋滞には変わりないので、どこも同じだと思うのですが
周りに負けないように
周りに勝つために
と心が殺気立っている夫には怖くてはっきり言えませんでした。
被害者意識と勝ち負け
夫にとって自分の車が追い抜かれたり、前に車が入ってくることは〝被害に遭っている〟〝負け〟という感覚だったのかもしれません。
私とのやりとりでも、
まったく意図していない場面で
馬鹿にされた
見下された
侵害された
と、ものすごく恐ろしい形相で被害を訴えてくることが多かったです。
誰もそんなこと思っていないのに、夫は周りの行為すべてが自分に向けられた攻撃・挑戦だと捉えていたように思います。
夫は運転しながら気に食わない車を見つけると
「ムギコ、隣りどんな奴乗ってるか見て」と何度も命令してきました。
※私は本当にこの命令が嫌でした。
夫はおそらく、夫の尺度で自分より〝上か下か〟を見定めていたのだと思います。
「女?」「年寄り?」
「どんな感じ?」
「変な奴?」
夫は自分より〝下〟とみなした人に負けることは、特に耐えられないのだと思います。
弱きものに強く出て
強きものには媚びを売る
これは運転に限らず、生活全般で言えることでした。
夫はよく「〇〇したら負けだ」と言いました。
夫独自の勝ち負けのルール。
夫の身勝手な欲求・衝動を肯定するだけの無意味なルールです。
被害に遭う=負け
相手は勝負なんてしていないのですが
夫は勝手にけんかを買い、
夫の狭く歪んだ信念の中で異常な闘志を燃やして独り相撲をとっていました。
良心と保身の葛藤
密室で繰り広げられる夫の恐ろしい態度、攻撃的な言葉、そしてそれに付随する運転中の危険や緊張、周りとのトラブルへの不安など、あらゆる恐怖をひとりで受け止めなければなりませんでした。
私は夫の非常識な言葉や態度、思考に賛同したくありません。
しかし、
ここで真っ向から否定してしまうと【敵】とみなされ、今以上に激しい夫の攻撃を受けると思うと、心が委縮してしまいました。
少しでも反旗を翻すような空気を出してしまうと
「今の俺、悪くないよね」
「何?なんか言うことある?あんなら言って」
と、凄みを含んだ表情と言い方で心を追い詰められました。
なので、
できるかぎり夫の心をなだめたり、気を逸らせようとするのが精一杯でした。
安全を促すためであっても、
夫の行動や心にケチをつけるようなことはあってはなりませんでした。
おわりに
夫とのドライブは
いつも事件・事故と背中合わせの恐怖や緊張感を強いられていました。
あおり運転のニュースを見るたびに、
今まで事故にならなかったのは紙一重の奇跡だったと思っています。
それくらい緊迫した状況があり、怖い思いもしました。
あおり運転の加害者の心理状況や背景は人によってさまざまなのかもしれませんが、私の夫のように、身勝手な被害者意識や勝ち負けへの異常な執着によって、これから犠牲者が出ないことを心から祈ります。