妻、やめます。

モラハラ夫と過ごした日々の回想録

モラハラ夫を育んだ親の正体③~母親の〈条件つきの愛情と支配〉

息子の主体性を奪い自立を阻む〈条件つきの愛情と支配〉

 

モラハラ夫を育む主な要因は〈家庭環境・親〉にあり、そしてその親もまた、モラハラ加害者であるケースが多いと言われています。


前回までは、

私が客観的に見てきた夫と両親の様子とモラハラ夫を育む家庭・親についての考察、

また、さらに

夫と父親の関係性について焦点をあてて書いてきました。

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今回は、母親と夫との関係性に絞り、モラハラ夫を生み出した要因について考えていきたいと思います。

私が見た、夫の母親


夫の母親は、夫の家族の中ではなくてはならない存在です。


家事、畑の手伝い、地域とのやり取りなど

本来は父親が中心になってやることのように思えることも、人との関わりが苦手な夫(夫の父親)に代わってフォローしていました。


夫の実家の権威は祖父に、発言力は祖母にあったようでしたが、実際に一家のあらゆることを細々と動かしているのは母親なのだと思われます。


働きもので社交的な母親

私が夫の実家で見る母親は、
とても良いお嫁さんのように見えました。


しかし、それは時と場合によるようであることに気づきました。


夫と同じように激しい二面性があり、

自分をよく見せる場面と
自身の負の感情に任せて表に出す場面がありました。


気に食わない状況や自分にとって見返りや利益がないと踏んだ人・物事に対しては、割と分かりやすく態度や言葉に表れました。


たとえ嫌悪を抱いても、状況によっては抑えることが必要なこともあると思うのですが、ストレート気味に届くお義母さんの感情には何度も戸惑い、傷つき、または〝素直な人なのだ〟と捉えるべきなのかと悩んだりしていました。


では、子ども(夫)に対してはどうか・・・

一見、息子を愛するごく普通の母親です。


母親は幼くして両親を亡くしており、苦労もたくさんされたと思います。

〝将来子どもたちにおやつを手づくりするのが夢だった〟って母親が言ってた、と夫から聞いたとき、お義母さんが愛して大事に育てた息子なのだから私も大切にしなくては、と思ったのを覚えています。


でも、実際に私が見聞きする母親の言葉や態度の中には、息子への純粋な愛情とは素直に飲みこめない、何かひっかかるものがありました。

 

夫と母親の関係


夫と母親のやり取りは、

父親と比べればまだ親子らしい親しみを感じられました。


しかし、

それでも夫の口調や表情・態度には何となくぎこちなさや固さ、変な遠慮があって異常に大人しい様子でした。


母親の理不尽な小言には一切反論せず黙ってすべてを受容し、父親に対してと同じように絶対に逆らいませんでした。


自分の思いや気持ちを露わにすることもなく、ただただ人形のように母親の要望に応え尽くす夫の様子には、親孝行とは異質のものを感じました。


ここからは、私が少し心に引っ掛かった夫と母親についてのエピソードをいくつかご紹介します。

母が語る兄弟のちがい

夫には弟がいます。

弟は夫とは真逆の人柄で、
おどけた口調と突拍子のない動きや発言がにぎやかなムードメーカーです。

夫も日頃はおどけたり冗談を言ったりするのですが、実家家族の前ではまったく出さないので、その兄弟の対比がものすごく際立ちました。


イチオは内弁慶で神経質
ツギオ(弟)は人見知りしなくて人懐っこい


母親が〝兄弟〟について、こそっと私にこう話すことが何度かあり、その話し方には何となく居心地の悪さを感じました。


近くに住む弟は休みの度に家族を連れて実家に来たり、仕事の後も自宅に帰らずに実家でご飯を食べたりしているようです。(奥さんは困惑していた様子でしたが・・・)


それにくらべて兄である夫は、

東京に行ってしまい
日頃は連絡も寄越さない
いつ実家に戻るかもわからない

(おまけに親の反対を押し切って東京の嫁をもらった)


従順で大人しい一方で、

母親の思い通りにならない息子への不満をいつも感じました。



夫が幼少期、陰で弟をいじめたり
思春期には罪のない弟に突然暴力を振るったりしていたというエピソードを聞き、とても驚きました。


よくある話とも取れるし、弟さんの話し方が明るくて面白かったこともあってみんな和やかに聞いていましたが、その時の夫は険しい顔で黙ったまま。

さらに

その内容の過激さや陰湿さには夫の心の闇を見たように感じ、笑い事では済まされないように思いました。


今、思えば

あのエピソードたちの中の夫には、いつも自分の居場所や存在を揺るがす弟への怒りや周りに理解してもらえない悲しみや不安があったのではないか。


幼少期から何かと目立っていたらしい弟。

母親が楽しそうに弟のエピソードを話しているのを何度か聞いていますが、兄についてはやや苦めのエピソードが印象に残っているくらいです。


兄はどれだけ頑張っても認められず、弟に母親の愛情や家族の視線を持っていかれてしまう恐怖を抱えていたのではないか、と考えました。

過干渉と無関心


【モラハラ夫を育んだ親の正体①】でも書きましたが、母親は息子の身の回りから人生まで管理したがり構う一方で、本当の夫自身の心や実態にはほとんど興味を示していませんでした。

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久しぶりに会っても母親の興味は〝息子がいつ実家に戻るのか〟だけなので、息子に一方的になかなか実家に帰らない不満を吐き出し、その後も自分のことばかり話していました。


ごくたまに、息子から仕事やプライベートについて話そうとしても母親の表情は曇り、露骨に興味ない様子を見せました。これはいつも夫が私にしているのとまったく同じ、サイレント・モラハラそのものです。


おそらく息子が

自分の目の届かない場所で
自分がいないところで
自分より楽しい思いをしている


どうやら母親は息子が自分と関係のないところで充実していたり、しあわせな思いをしているのが許せないようでした。


夫は母親がどんなに素っ気なくても怒ったり悲しい顔をしたり、それ以上自身を表にアピールすることはありません。


余談ですが、この図式が身に染みているのか、日常のなかで夫が何か良い思いをする場面で急に、親もしていないことをするのは悪いと〝罪悪感〟を訴えることがありました。



息子は母親の前で本当の自分をさらけ出すことはありません。

母親も息子の本質など知ろうとしません。



母親の干渉と無関心〉は相反するように見えますが、ありのままの息子を否定し、人格を無視しているという点で同じだと思います。

 

親の思いの押しつけ

実家に帰省した際、駅まで母親が車で迎えに来てくださいました。

その車中、いつものように

いつになったら実家に戻るのか、まったく連絡を寄越さない夫への不満など、夫の母親が一方的に話していました。


やがて、母親が見たという夢の話に。


その内容は、

夫が実家に戻り、地元の役所で働いている

というものでした。


夢の話と言いつつ、
それは母親の願望そのものだったようでした。


「夢でがっかり」

「役所で働いてくれたらいいのに」


母親の言葉はしばらく止みませんでした。



息子は教師として日々奮闘しているのにな

息子の今を認めてあげてほしい


夫はいずれ実家に帰るという親との約束を必死に守ろうとしていましたし、息子のこれまでや現状を否定してしまうような母親の思いの押しつけには胸が苦しくなりました。

母親の条件つきの愛情と支配


〝イチオが車を運転してくれて助かった〟

〝イチオがおじいちゃんの病院に行ってくれた〟

〝愚痴を聞いてくれるのは息子しかいないから、いてもらわないと困る〟

〝私たちにとっては優しい息子〟


母親が息子について私に伝えた言葉の一部です。


「元気そうでよかった」

「イチオに会えてよかった」


息子に向けた、
このような言葉を聞けたことがありません。


教師としての仕事
家庭のようす
息子の経験や思い出など

母親は、息子の主体的な行動や感情・思考にはまったく無関心ですが、息子が自分たちにしてくれたこと、役に立ったことについてだけは評価しました。



◯◯してくれたから、いい息子

◯◯してくれたら、いい息子


息子が自分らしくあるのはダメで

母親の思い通りに動くと条件つきの愛情をもらえるという印象を受けました。



厳密にはそれは愛情とは言えませんが、

夫はその〝愛情のようなもの〟に幼少期からずっとしがみついているのではないかと思います。



母親の愛情を感じるには
安心してここにいるためには

母親の要望に応え、役に立つしかなかった。


家を継ぐと言えば母親が喜んでくれて
家族からも一目置かれて大事にされた


だから夫は、何がなんでもいい息子でいることでやっと自分の存在意義を保つことができていたのではないかと思います。


何かと〝家族を大事にしなさい〟と発していた母親。

しかしそれは、

純粋な母の金言ではなく息子の忠誠が揺るがないための支配だったのかもしれません。

 

奪われた息子の主体性と自立心


夫の父親について前回も紹介しましたが

父親は人との交流を好まず、
家庭生活や子育てには協力的ではなかったように見受けられます。


実際、母親がそのような父親の特性に困っているような様子を見たことがあったり、母親のバースデーを家族で祝ったことがないという話を夫から聞いたときはものすごく驚きました。


生活に困窮することはなくとも、

お見合いでこの家に嫁ぎ、会話や共感に乏しく夫婦のコミュニケーションがままならない結婚生活はとてもさみしく、辛いこともあるのだろうと察します。


息子たちが生きがい
息子たちさえいれば

そのような気もちになるのも理解できます。



でも、母親は

そうやって自分の気もちを優先し
自分だけを守るために

息子をそばに置いて心の穴を埋めようとすることで、息子の主体性や自立心を奪ってしまったように思います。



長男が家を継ぐ


これは、父親・祖父母の強い要望です。


母親も父親たちと同じように〝家を守る〟〝風習を守る〟〝家の面子を保つ〟という意志を持ち、息子に必死に訴えているように見えますが、実は〝自分の心を慰めるため〟という本心を内に秘めているように思います。


家族が助け合い、心を寄せ合って生きていくことはすばらしいことです。



しかし、


〝家族の絆〟〝家庭円満〟を掲げて自分本位に息子の人格・感情を無視し、息子の成長する機会を奪い、母親とは違う個別の人として存在することを阻むのはおかしいです。



母親の愛情を求めて支配された息子は


嫌われないように
否定されないように

必要とされるように
大事にされるように


母親の顔色を見ながら

大人しく従順な優しい息子という役割を必死に生きています。



成長過程で人間力を削がれ、人の価値観で生きてきた夫は


自力で問題を思考し、打開する力

自身の感情と向き合い表現する力

人と共感したり、真に思いやる心


もっといろいろあると思いますが、

このような大事なものを育む機会を奪われてきたのだと思います。



そのまま社会に出、家庭を持ったことは、きっと夫にとってはものすごく大きな不安と恐怖の連続です。


選択や判断

コミュニケーション

あらゆる事象に付随する責任


自身の内なるものを駆使しなければならない日々。


しかし、その内なるものが養われなかった夫にとって、それらは人の何倍も力を要することであり、或いは未知であり、夫はそれを悟られないように何とか自分を保っていたのではないか。


そのために

外では

無理をして疲弊しながら〝いい人〟になって徹底的に自己保身をし、


内では、私に

そのストレスをぶつけ、
モラハラという暴力を施して支配し

力ずくで私の心を壊しながら、自分の折れそうなプライドを守っていたのかもしれません。



ここまで、私がひととき見たこと・聞いたこと・感じたことを元に夫と母親についておはなししました。



あくまで私の推測・考察ですので、

母と息子の実際はどうだったのかは定かではありません。


しかし、わずかながらも垣間見えた母親と息子の間には〝親子の愛情〟をめぐる問題があり、それが夫のモラハラ気質に何か影響を与えている部分があるのではないか、と感じました。

 

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