モラハラ被害者がモラハラをしてしまう負の連鎖
モラハラ加害者を生み出す主な原因は【家庭環境】【親】であると考えられるという記述が多く見られます。
私の夫とその親・家庭を思い返すと、やはりその説が当てはまるように思われます。
ここまで【モラハラ夫を育む親の正体①~③】にて、夫の家庭・父親・母親に焦点を当てモラハラ夫を育んだと思われる関係性・状況についておはなししてきました。
今回は、モラハラがモラハラを呼ぶ家族間の負の連鎖について考えていきたいと思います。
家族の中にある支配関係
夫の実家には分かりやすい家族のヒエラルキーがあります。
祖父母ー父ー子どもー母
母親が一番下。
これは私の印象です。
※子どもとどちらが・・・と迷うところですが、ここでは〝家にとって〟という基準にしました。きっと昔はどこの家でもそうだったのかもしれませんが、夫の実家では特に〝嫁〟の立場がとても軽んじられているように見えました。
表面的にはとても円満な家庭
でも、
〝家族はこうあらねばならない〟
〝下は上を慕い、絶対に従わねばならない〟
〝個人の心より家族のルールが大事〟
〝外からの見栄え・世間体が第一〟
このような縛りの上に成り立っている印象でした。
ルールがあることは悪いことではないので全否定はしませんが、夫の実家の中には一方的な価値観の押しつけや人の心を無視した強引さが多々見受けられました。
家族それぞれが自然体ではなくなんとなく無理をしていて、本音で語り合う姿や感情を通わせる姿が見られません。
微妙な距離
複雑なバランス
家族であるために
家族として認められるために
特に下の者は、自身の自由な言動・行動を歪めているようでした。
両親もモラハラ関係?
前に【モラハラ夫を育む親の正体②】でも書きましたが、父親は寡黙な人でした。
気が弱いとか穏やかというのではなく
人との交流を嫌い、家族ともほとんど会話がない。
感情の読めない無表情。
どのような場面でも、自身のスタイルを曲げない頑なな様子。
母親が時折
父親のことを恐れていたり、
自分の声が届かない、受け入れられない
というような不満を口にしていたことを思うと、両親夫婦のコミュニケーションはあまり上手くいっていなかったのかもしれません。
また、
〝息子との同居〟にものすごく執着し
息子の自立を阻むような行為をくり返したり
「息子がいなければ・・・」
「私には行くところがない」
というような言動からも、
母親を追い詰めるような夫婦関係、家庭環境があったのではないかと感じさせました。
私が率直に感じるのは
父親と夫は似ている部分が多いということ。
- 何を考えているのか分からない
- 話し合うことができない
- 家庭に無関心
- 世間には良い家族で通っている
- 〝親の言うこと〟は絶対
おそらく両親夫婦の間には、
見えない支配関係、サイレント・モラハラがあったのではないかと思います。
子どもたちの前で争うことはなかったようですし(夫が「うちの両親はケンカなんかしないから」とケンカ腰で私に言ってました)、父親が母親にきつく当たる姿やあからさまに無視している姿を見たわけでもありません。
しかし、
母親を追い詰めていたのは
外からは分からない空気による嫌がらせであるサイレント・モラハラであり、
また、
抗いたくても
向き合いたくても
対等に言い合うことも許されない
受け入れなければそこにいることが許されない
このような関係性や状況に於いて
母親のSOSは誰にも届かなかったのではないかと考えました。
実際のところ
両親の関係性がどうだったのか、真実はわかりません。
ただ、両親の姿からは
夫のモラハラと似たものを感じました。
愛着障害とモラハラ
モラハラは幼少期からの【愛着障害】による影響があるといいます。
【愛着障害】とは
幼少期に主たる養育者との安定した愛着を形成できなかったことにより、他者と自分の間に適切な信頼や安心を育むことができず心や人間関係の構築に問題が生じる障害のことだそうです。
モラハラをする人の心の中にあるのは
〝親への怒りと悲しみ〟
というような記述がありました。
父親との希薄な結びつき
母親の自分都合の過干渉と支配
極端かもしれませんが育児放棄に近いものがあったり、親の状況によって条件つきで愛されたり突き放されたりをくり返し、夫は十分な愛情と安心できる居場所が与えられなかったのではないかと思われます。
〝親からの愛情と承認〟を求める心。
親に認められ、愛されるためには
親に求められる自分にならなければならない
従い続けているうちに自分を失くし
自分がなくなった夫は、
さらに親から与えられるものにしがみつくことで自分の身を守ろうとした。
その結果
夫は親の前だけでなく、外のあらゆる人間関係や仕事・居場所に激しい不安や緊張が伴い、常に自身の安心・安全を手に入れるため、愛されるため、認められるために必死に自分を抑圧して無理をするようになってしまった。
しかし、
支配・抑圧されてきた本当の自分
どこまでも報われない自身の思い
このような、ごまかしきれない激しい怒りや憎しみ・ありのままでいられない生きづらさのようなものがあふれてとても苦しい。
本来、親に思い切り吐き出したかった感情。
でも自分にとって絶対である親には向けられない。
これが、私のような身近な家族にモラハラという形で向けられていたように思います。
逃れられないモラハラ連鎖の恐怖
家族それぞれの間に流れる
微妙な空気とバランス。
また、
親の前では特に
そぎ落とされたかのように薄い夫の表情と感情。
それらに気づいていた私にはものすごく違和感があり、いびつな家族の形のように思えましたが、夫は〝俺の家族は絶対正しい〟という強固な信念を持ち、すばらしい家族だと言い張りました。
しかし、本当の夫は
無意識の内に自分の立場・居場所・存在意義を守るため、自分を〈家・両親の求める自分〉に変えていかなくてはならなかった。
そして、
家庭を持った夫は
自身を脅かすものへの恐怖や緊張
愛情・承認が得られない怒りや苦しみを
親密な関係にある妻に
モラハラ行為をすることで発散し、自身の存在を保っていたいたのです。
見て学んだモラハラ
受けたモラハラ
夫は幼少期から自分がモラハラを見た、受けたという意識はないと思います。
夫の育ってきた環境の中に
夫の大事な人たちの心の中に
当然のようにモラハラが存在し
夫はそれを受け入れ、正しいものだと育まれ受け継いでしまった。
夫は目に見える傷を負ったわけではありません。
自立や自我を阻まれても
良識を歪められても
それはとても静かな暴力であり、虐待であるという自覚がないままに今の自分が形成されてきました。
高い教育の機会が与えられ
豊かな生活を与えられ
恵まれているようにみえる。
でも、そうして大人になった夫は
借りてきたような情緒・感情・一般論をあたかも自分のもののように扱い、さらに自身に都合よく利用することで身勝手に人を傷つける人になってしまいました。
世間から見た【家】を守るため
親自身の一方的な欲求・要望を通すために
息子の主体性・成長など、
人として生きるのに大切なことを育む機会を奪い
人格や心を歪め、不自由な感情や思考を持たせてしまった親・家庭。
その罪は大きいと思います。
夫はきっと今日も
〝何だか分からない不安と怒りといら立ち〟
を抱えながら
その捌け口を求め、
報われないことにさらに心を濁していると思います。
夫がモラハラだと知らなかった私は
どうにかして夫婦の仲を良くしようと必死でした。
しかし、
親や家庭環境から育まれたモラハラ気質
その負の連鎖
これらを断ち切るには、本当にモラハラ夫が〝生まれ変わる〟〝育ち直す〟くらいの労力や長い時間、意志の強さが必要なくらい深く根強いものだということが分かりました。
あくまで、限られた時間の中で私が見て聞いて感じたものであるため、邪推や歪んだ妄想も入り交じっていると思います。
しかし、
私が見た夫の家族を振り返ると
確かにそこには
強固な力とルール
容易に逃れることのできない支配とその鎖
モラハラ夫の心を育むような【親子の関係】【家庭環境】があったように思います。
自身を顧みることを恐れ
親を否定することに罪悪感を抱く夫
この先きっと、夫がこの鎖を断つことはないと思います。
でも、
同じモラハラ被害者として
同じような親や家庭環境の犠牲者として
夫にはこれ以上必要のない苦しみを重ねずにどこかで気づいてほしい、また、せめてさらなる犠牲が生まれないことを願うばかりです。
☟脳科学の観点から愛着形成の重要性について書かれた一冊