妻、やめます。

モラハラ夫と過ごした日々の回想録

サイレントモラハラに支配された妻の行動と心理

サイレントモラハラは見えない鎖


一般的に「モラハラ」と認識されているものは、暴言や侮辱・罵倒などによって相手を攻撃して支配する、分かりやすい言葉の暴力だと思います。


しかし、モラハラには言葉によるものだけではなく〝空気による暴力〟というものがあります。


『サイレントモラルハラスメント』
です。


私の夫の場合、

最初からひどい暴言や態度・罵倒などのモラハラを発動するのではなく、日常的にはサイレントモラハラによって妻を追い詰め支配していました。


空気による暴力〟
静かなモラルハラスメント〟

それらが人の心を支配することが可能なのか?


今回は『サイレントモラハラ』に支配されることによって妻の心がどのように働き、どのような行動を引き起こしていたのかをおはなしいたします。

 

夫による〝空気の嫌がらせ〟


夫の行うサイレントモラハラは以下のようなものでした。

  • 無視
  • 無言
  • いつも不機嫌
  • 攻撃的な溜息
  • 冷たい表情
  • 睨むか目をあわせない
  • 不満気な独り言


朝から不機嫌
帰宅して不機嫌

ちょっとしたことで不機嫌
何が何だか分からず不機嫌


話しかけても無視
質問しただけで睨む


重く不穏な沈黙
悪いものを吐き出すような溜息
私の存在を追い詰める独り言

機嫌がよかったかと思うと
いつのまにか冷たい表情で塞ぎ込む


夫の様子は陰湿で冷淡。
作りだす空気は重苦しく威圧的。


その異様な空気は、次第に私の心の機能を狂わせていきました。

〝空気〟に支配される妻の心の動き


〝空気〟に心を支配する力があるのか。

なぜ、私は〝空気〟に支配されてしまったのか。


  • 普通に話しかけも感じ悪い
  • 少しでも気に食わないことは無視される
  • 訳も分からず不機嫌
  • 威圧的で攻撃的な態度
  • 不満気なため息や独り言


日常的にくり返される夫のこれらの行為。

激務である夫を見てきている私は
夫の心身の疲労を心配したり、何か考え事をしているのだろうと察していました。

イライラや心の行き場のなさを家族に当たってしまうことはよくあることです。私は夫の負の感情も受け止め、癒す環境を整え支えようと心掛けていました。

 

しかし、

どんなに受け止めようとしても到底間に合いません。


あらゆる場面で夫からの攻撃的で不快な空気にさらされていくようになり、私の心は追い詰められていきました。


〝原因は私にあるのではないか〟


なぜなら、

夫はものすごく外面がよく、仕事も一生懸命こなし周りの先生からの評判もいい。

教員同士の飲み会にも欠かさず行き、最後まで帰ってこない。


ということは、

外に嫌悪を抱いているのではなく


〝妻〟や〝家〟に不満があって
露骨に嫌な態度をとっているのかもしれない


と考えました。

※この時はまだ、モラハラ夫特有の異常な外面の良さや二面性を知りませんでした。


夫を愛し、家族になった。

夫と純粋に、真面目に向き合おうとしている私はこの状況を見過ごし、無視することができませんでした。


そこで、夫とコミュニケーションを取ろうとしますが、夫は頑なに拒絶します。

何を聞いても

別に
特に
分からない

そう言いながら、露骨な不機嫌をぶつけてきます。


「もし、私が何か悪いことをしてたら言ってね」

「気づけないことがあったらごめんね」


夫はこれにはっきりとした返事をしません。


私のせいなのかどうか。
きっと私のせいなのだろう。


これで〝私のせいではない〟と思うことの方が困難でした。


夫の冷酷な態度への疑問や反発心もゼロではないのですが、そのような思いも蹴散らすほどの勢いと絶え間ない状況に、次第に自責の念に駆られていきました。


不安と恐怖と虚無感・・・


〝夫のためにもっと何かしなくては〟

〝夫の思いにもっと応えなければ〟

〝至らぬ自分を戒めなければ〟


モラハラ被害者の特徴でもありますが、そもそも自分への確固たる自信や自己肯定感が低い傾向があります。


それゆえ、


〝やはり私のような人間はダメなんじゃないか〟

〝夫に見合う人にならなくては〟

〝このままでは捨てられるのではないか〟


など、必要以上に自分を卑下してしまいます。


特に、私は夫より5歳年上であったため


〝やはり若い人が好きになったのではないか〟

〝子どもができないことを責めているのではないか〟


など、夫が自身の理想の結婚生活を送れていないことに嫌気がさしているのではないか、それを言葉にせず空気で知らせようとしているのではないか、と考えるようになっていきました。


常に夫のもたらす不穏な空気を敏感に察知し、夫から〝否〟〝非〟を突きつけられる恐怖と不安・緊張から逃れ、夫との平穏と愛情を取り戻そうと必死になりました。


このように、

夫は妻の心の働きを利用することによって、自身は目に見える暴力を振るうことなく、空気による嫌がらせで妻の心を陥れ支配していきました。


私は夫の嫌がらせを全身全霊で受け止め、飲みこんで従順に付き従い、愛情と忠誠を示そうと心身を捧げていくのでした。

サイレントモラハラに支配された妻の日常


一日中、頭のどこかで必ず夫のことを考えていました。

不自由させないように
つまらない思いをさせないように

楽しく穏やかで
あたたかい時間を過ごしてほしい

そして

夫婦になったしあわせ
夫婦になって味わう苦労

これらをどうすればふたりで共有できるのだろう

夫の顔色を異常に窺ってしまう

夫の不機嫌のスイッチが入ると、ものすごい緊張と恐怖に苛まれました。

目つき
背中
呼吸

ちょっとした動きで夫のサイレントモラハラモードに気づくようになりました。


なるべく平静を装い、明るくコミュニケーションを取ろうとしていましたが、その心の内は尋常じゃないほど全神経がフル稼働でした。

  • 大事な話
  • 夫への質問
  • お願いしなきゃいけないこと


夫にとって面倒だったり、不都合なことを発しなければならない場面ではさらに注意深く夫を観察しなくてはなりませんでした。


私が言葉を発した時の一瞬

口元が斜めに締まり
目に怒りを帯び
顔色が変わる


この時の、夫のあまりの恐ろしい空気に
言葉を失ってしまったり

また、

長い無言の間に、鋭利なため息や不平不満な語気の独り言をくり返されると、「ごめんね」と謝ってしまいました。


夫は一言も私の名前を出してはいないのですが、

「つまんねえなぁ」
「何かいいことないかなぁ」
「金ほしいなぁ」

そう、となりで言われ続けると謝らざるを得ませんでした。


度重なるモラハラの言動の中には、結婚してお金や時間が自由にならないことや自分の思い通りにいかない不満をぶつけてくることも多かったため、日常のサイレントモラハラにもその本音が込められているのだろうと思いました。


「私と結婚したからだよね」

「嫌な思いをさせてごめんね」


そう言って夫に謝罪を重ね、夫にもっとしあわせになってもらえるように尽くすことを誓うのでした。


夫の顔色を窺い、常に自身がどうするべきかどうあるべきかを判断していました。

夫の要望に完璧に答えようとする

夫の言うことや要望に対しては否定や拒否をせず、精一杯応えました。

それができて当たり前。
できなければ、夫は私を〝役立たず〟とみなし、見放すのではないか、と思っていました。


夫の要望に対し、少しでも私の了解の返事が遅かったり考える間があると、たちまち夫の顔色が険しくなりました。

「嫌ならいいよ」
「いい、いい。分かった」

そう冷たく言われると、
私は必死に食いつきました。


日常のさまざまなこと。
家の中では特に、夫の手となり足となり、夫には一切負担をかけないように心掛けました。

馬鹿になる

私が馬鹿だと夫が喜んでくれました。

〝馬鹿になること〟

それは私にとって、サイレントモラハラの恐怖と緊張を打破するための大事な手段でした。


日頃から、少しでもしっかりした態度で意見を言うと、すぐに不機嫌になり不穏な空気に見舞われました。


「偉そうに」
「だから?」
「何様のつもり?」


夫は私がまったく意図しないことを思い込み、被害妄想を抱いて非難してきました。


上か下か
勝ちか負けか


これらにやたらこだわる夫には、常に〝下〟や〝負け〟の存在が必要でした。


私は、夫に喜んでほしくて

夫の無茶な要望や命令に明るく素直に従い


脅威的な空気を吹き飛ばすように

おかしな動きや言葉で夫にアプローチしました


夫の心の平穏を保ち、私と一緒にいることで満足してもらうには、私が夫に見下される〝馬鹿〟でいることが重要だったのです。

夫がそこにいなくても


夫が出勤後、夫の姿がなくても
私の心は夫の脅威に支配されていました。


〇お風呂は湯舟につからない
夫はシャワーしか浴びません。
夫よりもお湯を使うのは罪だと思っていました。

〇テレビをなるべく見ない
ひとりでは、ほとんどゆっくりテレビを見ることはありませんでした。夫が仕事をしているのに私が楽しむのは罪だと思っていました。

〇お昼は食べないか、質素に
稼いでいない私が、ひとりで満たされることに罪悪感がありました。

〇夫が帰宅するまでは布団を敷いて寝ない
夫が仕事しているのに、私が身体を休めるのはいけないと思っていました。


もちろん夫がこれらを強制したわけではありません。


しかし

「俺が稼いでやってる」

「俺の金」

「俺の家」

「俺は仕事してやってるけど、あなたは何してくれてるの?」


モラハラによってこのような言葉で攻撃され、

サイレントモラハラによって〝静かな人格否定〟をくり返し受け続けることで、私は夫の突きつける身分制度に抗えなくなっていました。

 

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見えない鎖の卑劣な洗脳と支配


モラハラ夫は、妻の愛情や良心・向上心など、人として前向きな良い部分と、妻の弱点でもある自己肯定感の低さや心のもろさをあえて利用し、自らの歪んだ欲求を満たしています。


目に見える凶器を使わずに相手の恐怖や不安・緊張を煽り、相手が正当に抗おうとすると、直接傷つけたという証拠もないために屁理屈や嘘を駆使し、責任転嫁をして逃げてしまいます。


サイレントモラハラはある意味、最恐の暴力だと私は思います。


私は、それが自身を理不尽に傷つける暴力と捉えきれず、逆に、夫の思惑通りに自分を責め、夫のために何度も心を正し、行動を改めようと延々と心身を消耗し続けました。


私自らがモラハラ夫の暴力に協力し、加担してしまっている形であることに絶望を覚えます。


妻がどこかでこの共依存関係に気づかなくてはならないのですが、やはり洗脳と支配の中にあり、そこから離脱することの方に身の危険を感じてしまっているので、なかなか困難なことだと思います。


サイレントモラハラは見えない鎖の洗脳。


モラハラ夫がもたらす悪い空気に苛まれもがき続けている方々が、いち早くこの鎖の存在に気づき、その鎖を思いきって断ち切ることを祈るばかりです。

その鎖は

夫の愛情を繋ぐものではなく
夫の歪んだ欲求を満たすための支配の道具です。


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