最低最悪のクリスマス
クリスマスは毎年、張り切りました。
ケーキのデザインやディナーのメニューを前もって考え、当日は朝から準備に大忙しです。
《 ハッピーとサプライズ 》
夫に、少しでも家庭の温かさを理解してほしかったのと、少しでも2人の時間を明るく楽しくしたい気持ちでいっぱいでした。
でも、
毎年かならず
最悪な〝あのクリスマス〟の記憶が私の心をノックし、揺さぶりをかけてきます。
私がクリスマスに張り切るのは〝あのクリスマス〟の記憶を振り払うためでもあったのかもしれません。
あのクリスマスとは、、
〝結婚して初めてのクリスマス〟
今回は、忘れられない最低最悪なクリスマスを振り返ります。
24日。妻の病状に無関心な夫
夫と結婚して初めて過ごすクリスマス・イブ。
朝、夫の出勤を見届けるとすぐに
クリスマス・ディナーの準備に取り掛かりました。
途中までは順調でしたが、何となく頭痛を感じ始めると次第に体の異変が襲いました。
激しい頭痛
悪寒
鼻水
頭がぐらぐらと揺れ、まともに立つことすらしんどくなりました。
でも、狭い台所に盛大に広げられた作りかけの料理を途中で投げ出すわけにはいかず、どうしようもない姿でうなりながら奮闘しました。
工程がだいぶ遅れてしまい、
ケーキをデコレーションしている時に夫が帰宅しました。
すぐに自身の激しい体調不良を伝えましたが「そうなの?」と軽い感じの返事と「早く食おうぜ」との催促に、とにかくこのひとときを乗り越えようと思い切り自分を奮い立たせて過ごしました。
私はいつもとちがう料理やいびつではあるけれど初めて作ったデコレーションケーキに、2人の会話も弾むかなぁと期待していました。
が、、、
夫はどんどん食べ進め、
その後はすぐにパソコンを開いたりテレビを見たり。
食べてくれたのはうれしいけれど、料理もケーキも私とのひとときも夫の流れ作業の中に雑に組み込まれ、あっという間に終わりました。
私は少し落ち込みつつ、フラフラしながら最後の力を振り絞って片付けを済ませ、そのまま力尽きて布団に倒れ込みました。
※当然、夫は何も手伝ってくれません。
荒い呼吸をしながらバタバタと行ったり来たりしてはしゃがみこみ、止まらない鼻水と格闘している私の姿は、すぐそばにいる夫にどう映っていたのでしょうか。
一切こちらを気にする素振りを見せずテレビを凝視する夫に、少し異様なものを感じました。
その日は結局、
夫は眠りにつくまで一度も私の体調を気遣うことはありませんでした。
25日。妻を置いて飲み会に行く夫
朝。私は動けませんでした。
高熱のためか(その時家には体温計がなかった)頭が割れるか目が飛び出すか耳が引きちぎられるようなものすごい頭痛に襲われ、悪寒が酷く、身体がずっしり重いやら痛いやらでどうしようもない状態。
夜中もあまりのしんどさに何度も夫を起こそうかと思いましたが、起こした後の夫の反応を思うとその気力も奪われ、どちらにしても苦悶の一晩を過ごしました。
夫の棒読みのような「大丈夫?」
大人がこんなに悶えていて、誰が見ても大丈夫ではない様子だったと思いますが、夫は何も感じないようでした。私は状況を察して「たぶんインフルエンザだと思うから、病院行くね」と伝えるのが精一杯。
出勤前で心に余裕がないことは分かっていても、かなりドライな夫の様子に胸が痛みました。
なかなか起きられず、着替えもままならず。
ひどい恰好で病院まで行きました。
すぐ近くの病院が、とおい。。。
結果は、やはりインフルエンザ。
熱はしっかり39度以上ありました。
夫にもメールで伝えました。
終業時間が過ぎたころ夫からメールが届いたのですが、そこには驚きの内容が。
生徒のことで話がしたいから、X先生と飲んで帰る
私の体調を心配したり、思いやるような言葉はどこにもありませんでした。
確かにその頃、夫は自分のクラスのとある生徒と保護者との間で成績について揉めており、その対応に苦慮しているとは聞いていたので私も心配していました。
きっとその生徒さんのことだろうな、と察しがつきましたが、なぜ〝飲みながら〟話すのか。そのような大事な話や相談は職場できちんと話し合うべきではないのか。
夫にはなるべく丁寧に、自分の気持ちを伝えました。
- 仕事としてX先生と解決に向けて話すなら理解できるけど、飲むのは何だか違うような気がする
- 私も今回の生徒さんのことは心配しているし、今までイチオの仕事の邪魔をしようと思ったことは一度もない
- 私は体調不良でごはんを作ったり、イチオに何もしてあげられないけど、飲みに行くのはあまりにもひどいと思う
私の言葉に対して夫からまったく返事がなく、私はただ不自由な体を抱えたまま夫を待ちました。
帰りはそんなに遅くはありませんでした。
私のメールを少し汲んでくれたのかな、と思い、夫を責めませんでした。
でも、何だか私と目を合わせなかったり、その話しぶりや落ち着かない様子に〝生徒のことを話したいから〟というのは、飲みに行く口実だったんだろうな、と感じました。
夫はサンドイッチと果物のシロップ漬けを買ってきてくれました。
いろんな思いがありましたがその時は素直に、ありがたく一日ぶりの食事をいただきました。
26日。妻を放置し、さらに逆ギレする夫
翌日。
私はまだインフルエンザの症状が続いており、布団から出られませんでした。
今日は、夫が成績のことでもめた生徒・保護者と話し合いをするということだったのでとにかく心の中で〝無事に終わりますように〟と夫の身を案じていました。
夕方、夫からメールがありました。
話し合いの結果についてかな?と思ったら、また衝撃の内容が。
成績は変わらず終わり
ごめん、今日は学年の先生と飲んで帰ります。X先生、〇〇先生、▢▢先生、△△先生と
また聞いて下さい
と書かれていました。
昨日同様、私の体調についての記述は何もありませんでした。
自然と胸を締め付けるような感覚が広がり涙がこみ上げましたが、何とか耐えてやり過ごしました。
そして、心の波が落ち着いてから
改めて、夫が成績についての話し合いが終わったことに安堵しました。
夫は今回のことで先生方といろいろ話したいことがあるのだろうと理解して気持ちよく了解の返事をし、ただひとつだけ、またサンドイッチのようなものを買ってきてほしいというお願いをしました。
夫の帰りを待っていましたが
この日は朝帰りでした。
途中、何度か夫に連絡したもののまったくつながらず。
ものすごく重たい空気で帰宅した夫。
その顔にも声にも
優しさやいたわりは感じられません。
私は夫のあまりの非情さ冷たさに不安・怒り・悲しみでいっぱいになり、感情を露わにしてしまいました。
同僚と話したかった気持ちはわかるのです。
でも、
妻に一切体調を伺う連絡もなく朝帰りはつらいです。
その一週間前にも飲み会の朝帰りでものすごく傷ついたばかりで、またもこのような仕打ちを受け、心はボロボロでした。
醜く泣きながら夫を責める私。
自分でも本当に情けないし、嫌で仕方がない。
でも、どうしてもあふれる感情が抑えらえません。
夫は逆ギレし、恐ろしい形相と激しい怒声で私を非難しました。
「俺は仕事してんだよ」
「仕事への感謝とか言えないの?」
「おまえは教員の妻失格だ」
「おまえは仕事を分かってない」
私は、夫のぶつけてくる言葉に対して一つ一つ謝罪・反論・説明を重ね、自分の置かれた状況とそれに伴う心境も必死に訴えましたが、夫は一切聞き入れようとしませんでした。
「言い方が気に食わない」
「侮辱された。訂正しろ」
と、次々に話を逸らされ
関係のないことで私の非を責め始めました。
私が言われた通りに間違いを訂正し話を戻そうとすると、さらに怒鳴り散らしながら難癖をつけ徹底的に私を潰そうとしました。
「俺が悪いって言うのかよ」
「俺が悪いのか?」
「おい、はっきりしろよ」
「あぁ?どうなんだよ」
「悪いか悪くないか言えっつってんだよ」
夫は目をひん剥き、
怒声とともにものすごく柄の悪い口調で答えを要求してきました。
「イチオは悪くない」
「あぁ?」
「イチオは悪くないです」
「俺は悪くないんだな」
「はい、、」
「じゃあ、謝れよ」
「本当にごめんなさい。でも・・」
私が、少しでも言い訳したりまちがいを指摘しようとすると、夫は何かに取り憑かれたように怒り狂い、脅すような訳の分からない言葉を大声で連呼しました。
私がそれに怯え、謝ると
「てめえ、謝る気あんのかよ」
「謝んのか謝んないのかどっちなんだよ」
と凄まれ、恐怖のあまり何が何だか分からなくなってしまいました。
「謝ります。ごめんなさい」
「何が?何が悪かったのかちゃんと言わないと分かんねえだろうが」
「えっとあの、、仕事で頑張ってるイチオに、、、」
「あぁ?なんだよ。ちゃんと言えよ」
「ごめんなさい。私が悪い。ごめんなさい」
夫はかならず脅しと威圧を使い、強引な正論を振りかざして私が謝罪せざるを得ないような状況に追い込みました。
私がしくじるまで執念深く。
このような感じの恐ろしいやりとりの後、私が抜け殻のように布団に倒れていると、夫がコンビニの小さな袋を見せました。
「せっかく買ってきてやったのに」
私は、夫の見下したような表情と口調・醜いものにものを与えるような仕草に怒りがこみ上げ、その袋を取って投げつけてしまいました。
やってはいけないことをしたという自覚は大いにありました。今でも思い出すたびに人として未熟な自分を悔います。
「なにすんだよ」
夫は怒鳴り、今度は急に勝ち誇ったような顔になって
「あ~あ、食べ物粗末にするとか~」
「せっかく買ってきてやったのに。もうお前にはぜってえ何も買ってやんねえからな」
と私を非難しました。
私は、大泣きしながら土下座するようにひたすら謝り続けました。
強すぎる自己愛と著しく欠けた共感性
夫は私の病状の重さを理解できていたと思います。
分かっているけど、仕事を盾にして無視をした。
なぜなら
〝自分の欲求を通したいから〟
妻の気もちなど、
夫にはどうでもいいことです。
家に食事の用意がないなら、外で食べたほうがいい
病人の世話をするのは面倒、飲み会の方がいい
自分が主役の飲み会が気持ちいいから帰りたくない
妻に必要以上の心遣いをするのは損
夫の中では、夫の異常な自己愛に基準が合わされた天秤がせわしなく働いているのだと思われます。
夫は真の共感はできません。
でも、天秤の答えによって自身に得になると思えば〝共感の真似事〟をします。
外では〝ものすごい愛妻家〟として評判になるほどのいい夫を演じていましたが、その本性は〝自己愛に支配された自己中夫〟でした。
妻の心も身体も
夫の思い通りにならなければゴミと一緒です。
心の奥には夫への怒りや悲しみが渦巻いていましたが、それ以上に自身の醜態への恥ずかしさと情けなさ、自分が自分ではないような感覚に恐怖と不安を覚えました。