妻、やめます。

モラハラ夫と過ごした日々の回想録

見抜けなかった夫のモラハラ気質①~出会っておつきあい編

出会った人はとてもいい人


今回は

モラハラ夫との出会いを振り返ります。


私がいかに夫に心を開き、預けるようになったのか。

 

私から、信頼と愛情を引き出した夫
夫からの、歪んだ信頼と愛情を本物だと信じた妻


モラハラという言葉とは無縁と思われた、2人の出会いからのおはなしです。

いい人と出会う


夫と出会ったとき
私は35歳。
夫は30歳の誕生日直前の29歳。


以前働いていた職場でご一緒して以来、親しくなった年上の女性が出会いのきっかけを作ってくれました。


もう一人の20代の仲良しの子と私はその年上の女性を慕っていて、3人で仕事や家庭のことなどいろんな話題で盛り上がりました。
そんな話題のひとつが〝出会いがない〟でした。


その女性は私たちの会話を汲んで、食事会を設けてくれたのです。


私はそれまで、紹介の話や合コンの類に消極的でいつもお断りしていました。
でも、この食事会は既にセッティングされた後だったので、もう一人の仲良しの子と思いきって行くことにしました。


事前に聞いていた情報は、

男性2人
2人とも教師

女性は教師をしている男性の友人に声を掛け、その友人が自分の勤務する中学校の後輩を連れてくる、とのことでした。


10月のとある休日。
指定されたお店の前に行きました。


お店の前で立っている真面目そうなビジネススーツ姿の男性。
〝この人は教師の1人かな?〟


と、思った途端

女性が遠くから私を呼んだので、振り返って駆け寄りました。


するとそこには女性と同じ年の40代の男性と、ものすごく若くてはつらつとした感じの男性がいました。


その場でご挨拶した後、先輩男性が手をあげて遠くに合図を送りました。


〝やっぱりあのスーツの人、そうだったんだ〟


このスーツの人が夫です。

スーツの人は背が高く、とても丁寧にその腰を折り曲げて感じよく挨拶してくれました。


もう1人の20代の友だちは仕事後に合流ということで、5人で食事を始めました。


食事会は終始、教師の仕事のドタバタやあるあるなどが聞けてとても楽しかったです。


若いはつらつとした男性は、体育の先生。
とても感じの良い青年で、40代の先輩教師とともに場を和ませてくれました。


夫は理科の先生。

〝うん。確かにそんな感じがする〟と納得がいく印象。

銀縁のめがねと無造作な髪。
おしゃれ系ではないスーツ。

自分から積極的に話題をふることはあまりなく、大人しくて控えめ。
受け答えからは真面目さと丁寧さが伝わってきました。

 

目の前に出された料理を一生懸命ほおばる姿が印象に残っています。


私はこの食事会の前から、大事な情報を聞いていないことに気づいていました。

『年齢』です。


事前に聞くのは野暮?失礼?
と思い、そのままこの日を迎えました。


食事会の間も年齢の話題が一度も出ず、私はちょっと心配でした。


体育の先生は確実に20代
理科の先生は落ち着いて見えるけど年下だろう


〝どう考えても恋愛にはならない〟

2人は出会いを求めて来たのに、ものすごく年上女性が来たので動揺したのではないかと思い、なんだか申し訳ない気持ちでした。


結局、20代の友だちが来ないまま食事が終わってしまいました。
年上女性と男性はそれぞれ家庭があり、
あとは楽しんでね、と言われた教師2人と私はお店を変えて友だちを待つことにしました。


私は2人に明るく年齢を公表しました。

「せっかく来てくれたのにごめんね!」

「もう1人の子は20代で、すごくいい子だからもう少し待っててね!」


教師2人はその後も変わらずいい人たちでした。
一次会よりもさらに大声で笑ってはしゃいでとても盛り上がりました。

夫もだいぶ打ち解けていて、
さっきまでの大人しい感じではなく、大きな目がなくなるほど笑い、声も弾んでいました。

〝この人もこんなに無邪気にはしゃいだり、おどけたりするんだ!〟


私はおそらく2人をがっかりさせてしまったという負い目があり、少しでも楽しい気持ちでいてもらいたいという思いがありました。

 

なので、
夫のさっきとはちがう一面を見るとホッとしました。


私の友だちは大残業のために到着がだいぶ遅くなってしまいましたが、私は〝2人にちゃんと恋愛対象になる20代〟が来てくれたことで安堵しました。

個性も年齢もバラバラな4人でしたが終電近くまで盛り上がり、自然と連絡先を交換しました。


帰り、私と夫は方向が違うけど同じホームの電車だったので一緒に向かうことに。

私はすっかりお姉さん気分でリラックス。
夫もたくさん日常の話をしてくれました。


私が乗る電車が先に到着し、夫に時間をともにしてくれた感謝を伝えて電車に乗り込みました。
振り返って電車の窓の方を向くと、まっすぐこちらを見ている夫の姿がありました。

私は夫に手を振り、頭を下げました。
夫も手を振り、丁寧に頭を下げていました。

〝真面目で丁寧な人なんだなあ〟

夫のたたずまいや話し方を思い出し、そう思いました。


その後すぐに、体育の先生そして夫からもお礼のメールがきました。

〝とても楽しかった〟
〝また会いましょう〟

2人とも社交辞令と言えども、
相手を嫌な気もちにさせない配慮に感心しました。


私はすぐに年上の女性にメールしました。

今日の食事会の感謝に加え、
これからまた良い出会いがあるように頑張る旨をお伝えしました。

女性も察してくれたらしく〝次の良い出会い〟を応援する言葉をくれました。

その時の私は、夫に特別な感情はなく
ただ、非日常な空間で日頃出会えないような方々とたくさん笑ったひとときに満足して一日を終えました。

 

意外なメール


翌日、仕事の休憩時間にケータイを見ると
夫からメールが届いてました。

2人で帰り際に話していたことを踏まえた内容でした。

何気ないメールでしたが、
昨日の丁寧で真面目そうな夫の人柄がにじみ出た文章に少し心が和みました。

私は、やはりお姉さん気分でメールを返しました。


何度かやりとりするうちに〝2人で会いませんか?〟とのメールがきました。

これにはかなり驚きました。
〝え?2人??〟

夫はいい人であり、真面目な人。
驚きましたが深く考えず、明るくOKしました。

 

夫の真摯な意志表示


はじめて2人で会う日。
私は仕事があったため、夫が私の職場の方まで来てくれることになりました。

行くお店は事前にいろいろ相談したのですがなかなか決まらず、私が知ってるお店に行きました。

具体的な内容をあんまり覚えていないのですが、おしゃべりは途切れることなく弾んでいたと思います。


食事が終りかけた時、夫から

「今度は東京タワーに行きませんか?」

と言われました。


私は一瞬〝?〟と思いましたが
その日の会話の中で、私が東京タワーに行ったことがないと話していたから、と言うのです。


自分が何かの話の流れで発したなにげない言葉を丁寧に聞いてくれていることには素直に感激しました。


そして、次に会う約束をしました。

夫に好感と信頼を抱く


それからは、頻繁にメールや電話でやりとりするようになりました。

夫は器用なタイプではありませんでしたが、穏やかでのんびりした空気や丁寧で誠実な対応に、私は人として好感を抱いてました。



お出かけしたとき、
夫は私に特別な質問をしました。


もし結婚したら
将来、夫の故郷について行くことができるかどうかを問う内容でした。

 

夫は将来は地方の実家に戻って家を継ぐのだというのです。



いきなり〝結婚〟という言葉が飛び出してとても驚きましたが、私は私なりの考えを伝えました。


私は引っ越しが多かったため、元々〝地元〟や〝土地〟にそれほど執着はなく、若い頃から結婚して地方に行くことには抵抗がありませんでした。

親にもよく、私は好きになった人が遠くの人でもついていくからね、と宣言していました。


「つき合う人は結婚する人と決めている」

と言う夫。


慎重に言葉を選びながら私に大事な何かを訴えようとしている夫の言葉や表情はとても真剣でした。


これまでの私はそれなりに年と経験を重ねてきましたが、失敗も多く、本当に心の奥の扉を開くには臆病さと警戒心が大きく立ちはだかっていました。

自信のなさや恐怖から、一歩前に踏み出すことを躊躇したり避けたりすることもありました。


しかし、

夫のような真面目で誠実な人が大事なことを述べている姿を受け、私も真剣に目の前の人に向き合って考えなければいけないな、と思いました。


夫といるのは楽しかったです。

同じ景色を見て感激したり
同じものを食べておいしいと言える

世間話や、くだらない話
家庭や子どもについての考えや理想まで

さまざまなことを話しました。


程なくしておつきあいが始まると、
夫の優しく朗らかな人柄がさらに際立ちました。

そして、夫が発する言葉や考えはどれも浮ついたところがなく、堅実でしっかりしていました。

そのような夫とのおつきあいは、
私に大きな安心感と信頼をもたらし、深い愛情を得ました。

 

年齢差の不安


夫に対し、私は心を預け解放していました。

しかし

しあわせな中に
少し不安が混じることがありました。


『年齢差』です。


私が5歳年上であることがどこかでひっかかっていました。


30代後半に突入した女性のとなりを歩くことに、まだ30歳の男性が本当に満足するのだろうか?

世間の目は気にならないのか?


私は不安が募ると夫に伝えました。

すると夫はいつも淀みなく


「年齢差はまったく関係ない」

「ぜんぜん気にしない」


そう答えました。


誠実で真面目な良い人が、こんなに力強くはっきり言ってくれている。

信じていいのかな。

今まで男性とおつきあいするときに、年齢のことで悩んだことがありませんでした。
はじめて感じる不安に動揺していましたが、夫がそれを頼もしく解消してくれました。

 

モラハラの要素ゼロ


出会ってからおつきあいするまで、
夫の言葉・態度にモラハラを感じさせるようなものは何もありませんでした。

急に〝結婚〟の言葉が出たときは驚きましたが、そこには強引さや横柄な感じはまったくありませんでした。

夫のそれまでの人柄を思うと、その唐突な言動は真面目さ・実直さがより強く表れたものと感じ取れ、私の警戒心や危険信号は作動しませんでした。


誰でも、出会った時やつきあいはじめには多かれ少なかれ自分を飾り装う部分はあると思います。

しかし、私が見ていた夫はまったく非の打ちどころのない〝いい人〟でした。


親切・温厚・真摯・誠実・真面目・純粋


このような言葉が似合う夫を前にすると、かえって私自身のけがれた心を正したい、という気もちにさえなりました。


その後のおはなしはこちらです。

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