妻の思考と感情を揺さぶる【悪魔の言葉】
夫は、頻繁に
「これって俺の〇〇だよね」
という言葉で私を追い詰めました。
この〝俺の〇〇〟が
どういうもので、妻をどう追い詰めたのか、おはなしいたします。
〇〇には、だいたい決まった3つの言葉が入りました。
今回は、
〝俺の〟三大常套句のひとつ『俺の家』についてです。
『俺の家』の使われ方
夫は、自身が不利な状況であったり
都合悪く追い込まれたりしたときに
〝俺の〇〇〟という言葉を発動しました。
時に、激昂し怒声とともに威嚇しながら
時に、不気味な冷静さで妻を見下しながら
妻の心を乱暴に拘束し、無慈悲に傷めつけるのです。
頻繁に出てくる文句は
「俺の家に不満なら出て行け」
「俺の家だから、権利は俺にあるよね」
「俺が金払ってんだから、俺の家だよね」
「お前が出て行かないなら俺が出てってやるよ。俺の家だけどね」
「ここは俺の家だから、お前は実家行けよ」
「俺の家だから、いつ何をしようと勝手だよね」
などなど。
さまざまな場面で、いろんな言い方がありました。
妻が反論できない理由
冷静になれば、
俺の家だ!
と主張されたところで、ハイハイと流してしまえばよいと思うかもしれません。
今の私なら、そう思えます。
しかし、モラハラ被害を受け続けていた私は、心がすっかり萎縮していたため、夫の言葉をすべて正面から受け止めてしまいました。
夫への恐怖や、乱暴に突き放される絶望感に感情がかき乱され、まともにその場で正常な判断を下すことができませんでした。
理由① 正論を突きつけられる
〝俺の家だ!〟と言葉を放った後、
「どうなんだよ!」
「違うのか?」
と夫から威圧的に凄まれ、私は
「違わないです」
と答えるしかありません。
なぜなら、夫が主張する
〝家賃を払っているのは夫〟
これは事実です。
夫の言うことは正しい。
「俺、まちがってないよねっ」
「うん・・・」
「じゃあ、どうなの?ちゃんと自分で考えて」
そう言われた私は、
夫に不快感を与えたであろう自身の過ちを必死に探し、謝罪を重ねました。
家賃を払っているから〝俺の家〟
という正論を高らかに突きつけられることによって、私は夫に何も言えなくなりました。
まったく家のことに関係のないところから始まった話であっても、夫は強引に話のすり替えを重ね、自分が有利に立てる状況へと持っていきます。
私は、話のすり替えに乗るまいと必死に抗いますが、夫はそれを超える卑怯な手段で私の心を潰してきました。
理由② 私の家でもあるという安心感が持てない状況
これまでずっと、
家賃を払ってるのは俺。
だから、ここは俺の家。
という夫のずるい正論を突きつけられたり、日々のモラハラ行為によって、私は必死に抗う心を残しつつも、いつのまにか意識を変えられていました。
〝この家に住まわせていただいている〟
常に漠然と、申し訳ないという気もちが抜けずにいました。
仕事をしている人が一番偉い。
そうでないものは、それ以下。
夫に自分の意見を述べたり抗うことは、
仕事をし、生活を支えてくれている夫への不敬・冒涜とみなされ、私の人格は全否定されました。
よって、家賃を払っていない私という存在がとても惨めで、存在価値のないものに思えてきました。
〝何があっても、夫への感謝を持ち続けなければ、私は人間失格だ〟
〝夫にふさわしい、夫にとって正しい人にならなければ、私は追い出されてしまう〟
このように、
このままでは家にいることが許されない
という恐怖や不安が高じ、自ら強迫している部分がありました。
〝ここは私の家でもある〟と主張することに、強い抵抗を感じるようになりました。
理由③ 夫のひとり生活がベース
そもそも、ふたりの生活のスタートにも問題がありました。
まるで、
彼が一人暮らしをする部屋でかいがいしく身の回りの世話をする彼女のような感覚が続きました。
夫には、結婚生活というもの・ふたりで生活を組み立てていくという意識が非常に薄く、いつまでも心がかみ合いませんでした。
結婚が決まり、夫の部屋の更新時期に合わせて入籍の3か月前から新しい部屋での本格的なふたり生活を始めました。
夫婦ふたりで7畳の1K。
もちろん狭いです。
寝食すべて、何もかもひとつの部屋にごちゃまぜでした。
しかしその時は、
近い将来は夫の実家で同居する
ということもあり、
〝今はしばしの仮住まいだから〟と私たちの新生活に不思議がる周りの人々や、自分自身にも言い聞かせていました。
ふたりで住む部屋を決めるときの夫のズボラさや適当さに少し意見することはありましたが、夫に凄まれて驚いてしまい、それ以上は夫の意志に逆らいませんでした。
※結婚前はまだ、それがモラハラの一端だと分からず、夫の怒りは私のせいだと思い込み、私は自分を責めて猛反省しました。
しかし引越し後、
〝自分さえよければ〟という考えの夫との生活は大変でした。
最低限、ふたりが快適に普通に生活するためであっても、夫はお金や時間を使うことにものすごい嫌悪を示してきました。
「俺は必要ない」
「俺は気にしない」
「不満ならよそ行けよ」
「俺は大丈夫」
私は実家で余っているものは、それをもらいました。
でも、あまりいろいろほしいと言うと両親が心配すると思い、多くは私の自腹で買い揃えました。
※厄介なことに夫は、私の声に嫌悪を示して冷たく突っぱねる上に、実家から何かをもらうことにも、ものすごく不機嫌になりました。
両方に気を遣わなくてはならず、ものすごく神経をすり減らしました。
そして、そもそも純粋に私の引越しというものを考慮してもらえず、私の持ち物は最後まで揃いませんでした。
逆に、
「俺が使ってたものだから」
「俺が買ったから」
「俺の実家から持ってきたから」
夫はどんなに二人暮らしが不便でも、使えなくなってゴミとなったものでも、〝俺の〟息がかかったものを動かしたり、処分することをものすごく拒みました。
〝ふたりの生活〟にあまりにも無関心な夫の様子は、私に妻としての自信を失わせました。
やっぱり反論できなかった妻
〝夫婦なのに、これはおかしい〟
そう思う小さな声を外に出そうと、
「ここは私の家でもあるから!」
「だから、出て行かない!」
と、ものすごく頑張って大声を出してみたこともあります。
でも、夫の恐ろしい形相と威圧的な態度や言葉に抑え込まれてしまい、途中で心が折れてしまうのです。
怖くて、涙が止まらない。
夫婦間で意見や気持ちを伝えるだけなのに
こんなに頑張らないと言えない、
というのが、もう普通ではありません。
自分の中に棲みついてしまった
〝ここは家賃を払っている俺の家〟
という夫の言葉や念を自力では排除できないくらい、私の心は弱り、歪められていました。
おわりに
夫は妻を徹底的に追い詰める方法を知っていて、確実に支配・コントロールしようとします。
自分の歪んだ欲求を満たす
自己顕示欲の誇示
劣等感の払拭
夫は『俺の家』というワードで経済的に弱い立場にある妻を追い込み、強引に優位に立つことで、これらの欲求を満たし自身の心を守っていました。