妻の罪悪感を利用する知能犯タイプのモラハラ
モラハラをする加害者には
大まかに2つのタイプがあるのだそうです。
1つは、
「バカ」「おまえは何もできない」など
明らかに悪口と取れる言葉を浴びせたり、分かりやすい態度で脅したりする暴言タイプ(闘牛タイプ)
もう1つは、
淡々と理論的に相手を責め立て
自身を正当化することで罪悪感を与え、心をコントロールする知能犯タイプ(コブラタイプ)
私の夫は主に、後者の知能犯タイプでした。
※ほかにもいろんなタイプ分けがあると思いますが、今回は私が教えていただいた事を元におはなしを進めます。
今回は、夫のような知能犯タイプに属するモラハラについておはなしいたします。
知能犯タイプのモラハラとは?
夫とまともに話し合いたくても
いつも意図しない方向へ話が流され
事実が歪められ
それに必死に抗って軌道修正しようとしても
容赦なく正論と屁理屈を浴びせられる。
最終的には激しい暴言と態度で恐怖に陥れられることで心も頭も平常を保てなくなり、取り乱して謝罪するということをくり返していました。
以前、暴力相談に行ったとき
〝このモヤモヤした状況が伝わるだろうか〟
〝やはり私が悪く、おかしいのだろうか〟
そう考えながら、相談員さんに話し合いができない夫婦の状況を話しました。
相談員さんは何度も肯定的な相槌を打ち
私がうまい表現が見つからずつまずいてもゆっくりと待ってくれていたり、「◯◯な感じかしら?」など、的確な言葉で私が伝えたいことを代弁してくれました。
そして、話し終えてドキドキしている私に、相談員さんが疑念も迷いもないクリアな表情で夫について言い切りました。
夫には典型的なモラハラ加害者の特徴が表れていること
また、
夫は悪い意味でとても頭がよく、モラハラの中でも厄介な知能犯タイプであること。
そして、そのような人は
ずる賢く頭脳をフル稼働させ、どんな手段を使ってでも相手を論破する。
また、私自身についての心配についても、
私のような反応はおかしいことではなく、むしろ心がその事態の〝異常さ〟に気づき正常に働いていた証拠なのだから自分を責めることはない、と言葉をかけて下さいました。
私は今まで誰にもこのモヤモヤを吐き出したことがなかったため、ここまで受容し理解していただけたことに初めて大きな安堵を得ました。
では、具体的に知能犯タイプは何をするのか
- 次々と論点をすり替える
- 強引に責任転嫁する
- 屁理屈を並べ立てる
- 揚げ足をとり続ける
- 俺は被害者だ、と言い張る
- 平然と嘘を突き通す
- 記憶を自分に都合よく変えてしまう
これらを間髪入れずくり返し突きつけ、
とにかくまともな議論、話し合いはさせません。
私が発する言葉や思いをことごとく歪めて解釈し、頭がおかしくなるような展開に持ち込み、私が壊れて黙るまで徹底的にその手を緩めませんでした。
強引な正論と正当化をくり返すことで私の心の動揺と混乱をあおり、罪悪感からの自滅に陥れて支配することがモラハラ夫の狙いです。
知能犯タイプが厄介と言われるのは
被害者が身動きできなくなるだけでなく、暴力が表に見えにくい特質のために外からの救出が難しいからだそうです。
加害者は知的に理論的に自身を正当化し、脅し文句を絡めながら冷静に追い詰めていくため、被害者は心の動きを妨げられて諦めてしまったり、自責の念に囚われて被害を訴えるどころか自身の感情を抑圧し、自分が変わることで事態を収拾しようとして心を消耗してしまう。
また、
DVなどのように目立った傷やあざがあるわけでもないので、被害が表に理解されにくいのです。
確かに私も、どんなに酷い仕打ち・理不尽な傷を負っても最終的には夫を庇い・敬意と感謝を深め直して付き従うことを決意していました。
友人とのおしゃべりで夫婦について話すことはありましたが、問題の根源が〝私のせいかもしれない〟という恥ずかしさのような感情や、夫を悪者にすることへの罪悪感、または、せっかくの楽しいひとときに答えの出そうもない重たすぎる話はできないという思いもあり、その内容や表現はあくまで〝よくある夫婦のドタバタ〟の域を出ることはありませんでした。
なので、外の人には
本当の悲惨な状況を知られることはなく、なんだかんだしあわせな夫婦生活を送っているという印象だったと思います。
知能犯タイプのモラハラは
せっかく持ち合わせた頭脳も得た知識や情報も、夫婦にとって正しいことや良いことには使わず、ただ自分が何が何でも優位に立ち、妻を打ち負かして支配することにばかり費やしていくのです。
夫のずるい正論と正当化
夫は、
妻へのモラハラを認めないため
自己保身のため
頭を使って正論を放ち、知的に理論的に正当化することで妻を追い込んできました。
嫌がらせのような不機嫌・無視・無言
嘘や裏切りなどの不誠実な言動・行動・態度
生活を営む上で最低限必要な話合いや相談を露骨に拒絶する
日頃、このような夫からのモラハラ行為に対し、その時のあまりの緊張と恐怖で飲みこんでしまうこともたくさんありましたが、〝理不尽に傷つけられていることへのつらさ〟や〝夫にとって何が至らない部分なのか分からない不安〟が拭えず、夫の顔色を窺いながら慎重に問いかけたりしました。
私から夫に向けた純粋な思いや問いに対してまず放たれるずるい正論・正当化は以下のようなものです。
「俺、怒ってるって一言も言ってないよね。言いがかりはやめてくれる?」
「家族は信頼が大事だよね。あなたみたいに人を信じられないって悲しいよね」
「俺の家だから俺が何しても自由だよね?」
「今俺の時間だよね。昼間がんばって働いてきたのに、まだ何かしろって言うの?」
「俺は争いたくないんだよね。おまえはいつもケンカを吹っ掛ける」
「夫婦は思いやりが大事ってあなたも言ってたよね。あなたは仕事で疲れてる人を思いやる気持ちとかないの?」
「俺は何とも思ってなかったのに、あなたにそう言われて今嫌になった」
「俺、毎日がんばって働いてるよね。それなのになんで文句言われなきゃいけないの?あなたには感謝の気持ちってないの?」
夫自身が発した嫌がらせを棚に上げ、
私の言葉や感情を強引に歪めた解釈とひねくれた屁理屈で追い込んでいく夫主導の展開。
かなり巧妙で、その複雑さや緻密さを具体的に表すのが難しいので割愛しますが、とにかくどんなに夫に明らかで確かな非があったとしても、上記にあげたようなセリフを平然と放たれるところからじわじわと私を陥れるゲームがスタートしました。
妻の自滅と罪悪感
夫からくり返し正論と正当化を突きつけられ続けた私の心は
頭から人格を否定される悲しみ
真の心を受け止めてもらえない寂しさ
不誠実な態度で事実を歪められる怒り
ありえない誤解で理不尽な叱責を受ける悔しさ
とにかくありとあらゆる負の感情が揺り起こされました。
これまでの人生で、一時にこんなにさまざまな感情が入り乱れることはなかったのではないかと思います。
一言一句に揚げ足を取られ
無理問答のように繋がらないやりとり
訂正と謝罪を延々と要求され、どんなに丁寧に応じても最後は
「あなたみたいないい加減な人には何言っても無駄だからもう話したくない」
「おまえのせいですげぇ傷ついたわ。もう終わりだよ」
「俺はこれ以上できない。後はあなた次第」
などと言い、拒絶。
「ちょっと待ってそれはちがう」
「私はそんなこと一言も言ってないよ」
「もう一度ちゃんと言うから聞いて」
本当に話したいこと、伝えたいことを必死に戻そうとしますが、こちらを睨みつける夫の目を見ると変なスイッチが入ったことが分かります。
※このスイッチが分かるようになったのは結婚してしばらく経ってからです。
据わった目で私を捕らえ、
今度は一段と凄みを利かしながら追い詰めてきます。
私も夫がしかけるトリックにはまらないよう、脅威に飲み込まれないように夫の言葉に注意深く意識を向け、必死について行きます。
〝今日こそは夫を怒らせず、心を強くもってしっかり伝えよう〟
いつもそう思いながら夫に向かい合います。
しかし、
私が〝正しく〟夫を突くような言動・態度をしてしまうと、夫はそれまでの冷淡さを完全に脱ぎ捨て、何かに取り憑かれたような姿を見せました。
目をひん剥き、赤黒い鬼のような形相と訳の分からない怒声を連呼。
何度も見ているのですが本当に恐ろしく、この状況になってしまうと私は平常心を保つのが難しくなります。
「気に入らないなら出て行け」
「教員の妻失格」
「てめえの心なんかどうでもいい」
「気持ち悪い、さわんな」
恐怖心で弱る私にさらなる勢いで重ねられる言葉。
「おまえ俺のためになんかしてくれたことってあんのかよ。何もないよね」
「あなたがそんなんだから子供ができないんじゃないの」
私は何も言えません。
夫の言葉は感情的突発的なようで、実はその一言一言は確実に私の心の弱みや傷をしっかり捉えていました。
夫は本当に自分を見失って激情しているのではなく、そういうポーズをもって動揺させ、意識は冷静に虎視眈々と私を確実に黙らせる言葉を選び、発するタイミングをみていたのだと思います。
おまえのせいで
俺はつまらない
俺は傷ついた
俺は不幸だ
私にとってこれらを突きつけられるのは、とてもつらいことでした。
例えば、実際心の奥に〝子どもができないのは高齢の私のせいかもしれない〟という不安を抱え〝子どもを望む夫をしあわせにできない〟という悩み苦しみがあったのですが、夫はそんな私の弱みをフォローするのではなく、支配の糧としました。
自己肯定感の低さから、夫から〝役に立たない〟という烙印を押されることを常にどこか恐れていた私。
夫は何をどうすれば私が自滅し支配できるかを把握していたのだと思います。
責めてしまった罪悪感
疑ってしまった罪悪感
誤解してしまった罪悪感
夫と分かり合いたい
夫と繋がりたい
温かく穏やかな関係を望んでいたつもりが夫を不愉快にし、ここまでの言葉を吐かせ、夫の時間を空間を汚してしまった。
私のせい
私は夫から許されるまで謝罪をくりかえし、
再び夫に見合う自分になることを誓い、不毛な努力を重ねるのでした。
すべてモラハラ夫の欲望をみたすゲーム
何かがおかしい
まちがっている
夫の吐く暴言はいつもだいたい同じような内容であるとか、話の筋を大胆に逸らしていく瞬間などに気づくことはできるのですが、
人を不安にしたり立ち直れないくらいの絶望感を与えるような表現や口調、間髪入れずに恐怖に陥れる表情や声色を浴びせられていると、夫の正論と正当化から始まる巧妙な策略から逃れることができませんでした。
取り乱して泣きじゃくり、許しを請う妻。
傍から見たら
妻が悪い
妻がおかしい
妻がやばい
夫が可哀想
大半がそういう評価になると思います。
自分でもあんなに恐怖や罪悪感に壊れていく姿は常軌を逸してしまっていることが分かっていたため、さらに自信をなくしていきました。
このように
知能犯タイプのモラハラ夫は
自己保身のため
洗脳し支配するため
歪んだ欲望を満たすため
一見常識的な正論を撒き散らしては強引な正当化をくりかえし、動揺と混乱・恐怖心と罪悪感を利用することで妻の正常な心や考えをも狂わせていきました。
夫の狡猾で悪知恵のはたらいた言葉や話の持っていき方を表現することができず、もどかしい思いでおります。
頭がおかしくなるようなあの感じを再現したかったのですが、力が足りず申し訳ありません。
加害者とのやりとりで訳のわからない罪悪感や拭えない悲しみ・痛みを抱えていたり、この記事を読んで何となく感じることがあったら、どうか自分をただただ責めることをやめてあげてほしい、と心から願っております。